デューディリジェンス
(投資先資産価値・リスク評価)
デューディリジェンス(Due Diligence)とは、ある行為において法的な責任を負う前に、自らその行為に対して払うべき正当な注意義務及び努力を指します。
主にM&Aにおける買収先の価値査定を指すことが多く、財務・税務デューディリジェンスと呼ばれていますが、その他にも、事業デューディリジェンス、ITデューディリジェンス、法務デューディリジェンス、人事デューディリジェンス、環境デューディリジェンスなどその調査の切り口や視点によってさまざまに異なります。
しかし、これらのデューディリジェンスをすべて網羅する必要はなく、必要に応じて選択して実施していくことが一般的です。複数のデューディリジェンスを実施した場合には、それぞれを関連付けて総合的な判断を行うようにしましょう。
法制度ではなく、自己の努力である
上述しましたように、デューディリジェンスは自らが払うべき注意であり、法制度によって定められているものではありません。
実施はあくまで企業が要望した場合にのみ限り、行わずにM&Aや投資行為に踏み切ること自体はなんら問題はありません。
しかし、事業の拡大や育ててきた分野の継承など、経営戦略上非常に重要なアクションにおいては、しっかりとデューディリジェンスを行うことは企業として当然の義務でしょう。
デューディリジェンスはその投資の瞬間だけでなく、それを行った後の将来の収益性にまで目を向けて行いますので、専門の知識を持った者に依頼をし、より正確な投資先の価値判断をすることが望ましいです。
取引を行う双方がデューディリジェンスを実施しましょう
デューディリジェンスを行う際には、何を売買、または買収合併するかなどの取引の本質にかかわらず、まずその買い手と売り手が相互的にデューディリジェンスを行うことが大切です。
その実施におけるすべての段階で、売買、買収関係がもたらすと見込まれる利益が、貴社の求めている利益、将来のビジネスの理想と合致しているかの確認が必要となります。
あまりに早期にデューディリジェンスを実施しない
デューディリジェンスは企業が買収したい事業や投資先、または売却したい事業を持ち、その潜在的な投資もしくは売却先をいくつか検討し始めた段階で始まりますが、あまりに早期からのデューディリジェンスを実施してしまう企業が多いことも実情です。
実際にデューディリジェンスを実施する場合には、双方が十分かつ信頼できる財務状況の開示を行い、法的な拘束力のない覚書等をもとに協議し同意した状況をまずは形作ることが望ましいです。
候補先の検討段階からデューディリジェンスを始めてしまいますと、売買契約が貴社ビジネスにもたらす影響を十分に考慮することができません。また、その性質上売買・買収が差し迫ったものであるとの印象を与える可能性も出てきます。まずは売買自体が実行可能であると確信してから初めて、デューディリジェンスを始める必要があるのです。
そして何より、デューディリジェンスは膨大な時間と労力がかかるものです。それだけのコストをかける必要がある候補先を選べるまでは、デューデリジェンスを実施する必要はないということです。
必要な情報だけを選別しましょう
明確なことではありますが、デューディリジェンスを実施する上で企業が知りたいのは、取引相手の財務上の価値や法律上のリスクであり、一般的には過去の財務諸表や代表者、従業員、顧客の属性やサービス戦略から実務の手順まで細部に渡ります。
そのすべてが貴社の望む買収において必要であるというわけではありません。不必要な時間とコスト、情報の混乱を避けるためにも、専門性を持った者に仲介役として関わってもらい、本当に知りたい情報だけを整理していけるようにしましょう。
取引を行う双方が、お互いの知りたい情報をリスト化しておくことも円滑に進める手立てであります。
多くの場合、財務諸表や雇用契約関係のすぐに開示できるもの、売掛金や顧客情報の分析結果、運営の生産性などの多少収集に手間のかかるもの、各報告書や品質管理のプロセス、事業所や設備の内部調査やある程度の意思決定権を持つ人たちの意見などの収集に時間のかかるもの、というカテゴリーに分けてデューディリジェンスにおける効率と優先順位を決定していきます。
こうした情報整理やどこから評価を始めていくかの優先順位の決定や円滑なデューディリジェンスプロセスの策定も、専門的な知識を必要とします。評価そのものだけでなく、評価をするという行為にも慣れている専門家の助けを得ることが、理想的なデューディリジェンスを実施し、取引を成功させるカギとなるでしょう。
デューディリジェンスの結果による意思決定・リスク
デューディリジェンスを実施して出された投資先の評価において、売買の目的と要求を満たすものであれば、そのまま売買契約の締結を行えばよいでしょう。
しかし、時として十分な情報共有がなかった場合や実際に評価をして対象の価値が予測と合致しないという場合もあります。
そしてそもそも、相手先にその契約によって良い影響を得られないと判断されてしまう場合もあります。その場合には、評価以前に、相手先が持つビジネスマインドへの理解が足りていなかった結果です。
もしも思いもよらぬデューディリジェンス評価がでてきた場合には、売買自体の中止、売買契約内容の変更、貴社の売買におけるビジネスゴールの変更のいずれかが求められることになります。
そのような意思決定をする必要性が出てこないようにする、リスクヘッジのためにも、デューディリジェンスに詳しい専門家の関与は必要だといえるでしょう。
また、いずれかの意思決定が必要となってしまった場合でも、どの選択肢を取るかのアドバイスを行える専門家がいると頼もしいです。

